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それ、照れます!

照れたら書き、書いたら照れる。三十超えて頬を赤らめ、ひとりゆく。上平格子の「照論文 」

火が通る

照れし日の歌

横顔のあの人はしなやかな指先をそろえて頬に添えた

凜とした背筋を黒いジャケットが抱く

平日昼の喧騒など彼女のためのお囃子だ

 

「すみません! サーモンしゃぶしゃぶください!」

 

私は恋を知った

箸は私の手から離れ108円の皿の上

耳は塞がれ口はアドバルーンになって成層圏を突破した

恋がはじまりましたと昇っていった

レーンの上の乾いたサーモン

四回私は見送った

横顔のあの人はもういない

握りたてのサーモンしゃぶしゃぶがいくつもレーンに乗ってやってきた

私は恋を知っている

たぶん四十を越えている

火が通っていた

火が通っていった

私は照れた