読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

それ、照れます!

照れたら書き、書いたら照れる。三十超えて頬を赤らめ、ひとりゆく。上平格子の「照論文 」

免許がなかったらなんだっていうの

 車の免許を持っていない。生まれてこのかた取得したことがない。

 なにかの折につけ、ぼくは免許持ってないからなんてことを人に話すと、まあ大抵のリアクションがこうだ。「ええ〜! マジで? ありえないんだけど!」「ウソでしょう? 男なのに?」「どうやって生きてきたの? デートする時どうするの?」「TSUTAYAのカード作る時どうやって身分証明するの?」

 免許を持っていないぼくは現実に存在していて、性別も男なわけだけれど、車を運転しないで生きてこれた。むろん、デートは電車で行ける。保険証、パスポートがある。

 すんごい顔で言われるの。免許ないの!? って。実はここ一ヶ月ノーパンなんだよと告白してもここまでの顔はされないだろう。当方、もう三十の坂を二つ三つ登ろうとしているわけなのでもうかれこれ、十年以上はその顔を見てきた。「いや、パスポートはあるんかい!」と、下手なツッコミも受けてきた。その都度、ブラックリストに彼ら彼女らの名前と顔を追加し、必殺仕事人に成敗してもらおうかと金策に走る。

 考える、聞く、想像する。なぜこれができないのか。もしかしたら、えげつない理由で免許を諦めるしかない人もいるかもしれない。金銭的な事情もあるかもしれない。二十歳前後の、それを取るのにもっとも旬なその時期になにかがあったかもしれない。身内が交通事故に、あるいは交通事故を。あるかもしれない。

 なにが「免許ないの〜!?」だ。うれしそうに。

 人を助手席に乗せている時、偉そうにするな。ひじを窓の外に出すな。運転する時だけ用のダサいサングラスをこれ見よがしにするな。舌打ちするな。ユーロビート流すな。そのあとにB’zのベスト流すな。つぎ、加藤ミリヤかけていい? ダメに決まってるだろうが。なんかおもしろい話してよと恫喝するな。マックに行こうとするな。シリアスな顔して薄っぺらいこと語りはじめるな。うまいラーメンを食べるために県を越えた話はやめてくれ。歩行者にキレるな。前を走る練馬ナンバーのプリウスがいなくなって、足立ナンバーのプレジデントが入ってきた瞬間ひじを中に引っ込めるな。出せよ。

 「自動車学校ぐらい若い時に行っとけよ〜」

 行っていました。普通免許(MT)と自動二輪のパックプラン。ローン組んで行ってましたよ。一番安いのを組んで。金利だけでプラス十万円になるようなやつで。 仮免の手前で辞めました。それから五年くらいかけて支払いを済ませました。免許がないからなんだっていうの。